國之語音異乎中國 與文字不相流通 故【愚民】有所欲言而終不得伸其情者多矣
おかしいと思ったらソースを当たれ、は某巨大掲示板での教訓です。さっそくユネスコのHPを開き、世界遺産リストを探してみました。
なるほど世界遺産のリストにハングルなど載っていません。考えてみれば当たり前で、もしハングルが世界遺産に登録されるのであれば、ハングルよりずっと優れた漢字が先に登録されるはずです。
色々調べていくうちにユネスコの「Memory of the World」という記録に「訓民正音」が登録されていることがわかりました。
「Memory of the World」についてはリンク先をご参照いただくか、あるいは各自で適宜検索していただけば、これは「世界遺産」とはまったくの別物であることがご理解いただけると思います。
「訓民正音」とは、15世紀に李氏朝鮮の世宗王が現在ハングルと呼ばれている文字を制定した経緯と過程を記した書物です。漢字の読み書きが出来ずに意思疎通に苦しむ「愚民」(原文ママ)を哀れんで、学者に命じて作らせたのが現在ハングルと呼ばれている文字であるということが明記されています。
半万歩譲ってハングルはユネスコの「世界遺産のようなもの」に登録されてると言っても良いんですが、次の問題は、登録されているのは「ハングル」という文字ではなく「訓民正音」という書物ということです。
仮に「広辞苑」が「Memory of the World」に登録されたとします。するとこれは「日本語」が「Memory of the World」に登録されたことになるでしょうか?もちろん答えはNoです。登録されているのは「本」であって「文字」や「言語」ではありません。
「訓民正音」が「Memory of the World」に登録されたのは「文字が発生する過程が記された書物は珍しい」という理由からです。それも当然で、文字で書かれている書物に文字が発生する過程が記載されるというのは、親より先に子供が生まれるようなもので、本来はありえません。漢字にしてもアルファベットにしても、もちろん日本のひらがなカタカナにしても、すべて自然発生的に発明されており、文献資料をたどって発生の過程を垣間見ることは可能ですが、いつ誰がどうやって作ったかを記した書物など存在しません。
つまり「記録に残るほど後発の文化発生が記された書物」というのが珍重されただけなのです。しかもその書物には「(現在ハングルと呼ばれている文字は)愚民用文字」と宣言されているというおまけ付き。
漢字文化圏において、漢字が読めない悲喜劇ここに極まれりといったところでしょうか。
当のご本人たちは全然気にしていらっしゃいませんが。

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