ザパニーズな広告
特に目を引く記事も無いままに最後のページを開いた時、一瞬奇妙な違和感を覚えました。そのページは、一見して広告のページであることはわかります。そこに掲載されている写真には、茶室のような雰囲気の和室にホテルの従業員のような制服を着た若い女性がきちんと正座しております。その横にはフォーマルな装いの男女が、やはり正座し、楽しげに身を乗り出しています。彼らの前には、ルーレットとチップを張るためのシートが延べられています。
それはどう見ても、日本のイメージを強調した広告です。そしてその広告写真に付されたコピーは、こう謳います。
「和めるなぁ、ウォーカーヒルって。」
を表現してみました。
はぁ?
さらに写真の下に掲載された広告文は、こう謳います。
『まるで、茶室にでもいるかのように、安心してプレイに集中できる。ウォーカーヒルは、そんなカジノ。そのために私たちは、店内の雰囲気や、お客様へのサービスに心を尽くしています。もちろん、スタッフは日本語も話せますので、初心者の方も安心。37年もの間、日本からのお客様に愛され続けているのは、日本との距離が近いからだけではないのです。さあ、あなたもぜひ、ウォーカーヒルへ。
距離も、ココロも、日本に近い。
ウォーカーヒル
カジノinソウル』
ちょ、ちょっと待て。ここは日本で、東京の羽田空港で、私は国内線に乗ってやってきたんだよな?今から向かうのは日本の千葉県だよな?何かの間違いで実はソウルの仁川空港に到着してて、これからこのバスでウォーカーヒルに連れて行かれるってことは、絶対無いよな?と一瞬マジでうろたえました。
その広告写真から受ける理解できる情報と理解できない情報が錯綜し、頭の中は混乱しています。どう見ても、その広告写真は日本的なイメージにあふれ、しかし日本的な美意識とは大きくかけ離れ、ソウルという文字は確かにあれど、日本を強調する字句はそれを覆うかの如く氾濫しています。
「何なんだこれは?」
まるで騙し絵を見た時のような、一見辻褄が合ってるようで実は合ってない印象を受ける写真。それがウォーカーヒルの広告写真でした。
カモネギ日本人観光客を誘致したい国や地域は、世界中にたくさんあります。何か事件や災害があると、大げさに反応する日本人観光客に向けた「おいでませ○○へ」のキャンペーンは、毎年のようにあちらこちらの国から発せられます。また、各国の施設の広告も、商売柄たびたび目にします。
どんな国の写真でも、どんな施設の写真でも、その国その施設でないと体験できない、そういうイメージを小さなスペースに必死で詰め込んでいます。ウォーカーヒルのように「まるで日本にいるような気分」を強調する広告など、それまで一度も見たことがありませんでした。
日本人の私が見ても混乱する広告です。日本語を解する外国人がこれを見たら、どう理解するのだろうと思いました。
「韓国って、日本と思われたいのか?」
その車内誌を閉じながら、私はまるでザパニーズに足を踏まれて「スミマセン、アイムザパニジュ、スミマセン」と言われたような、不快で不可解な気持ちで一杯になりました。
なお、広告写真の実物をご覧になりたい方は、こちらをご覧ください。