日韓友好絵本
行動展示というのは、動物園などの施設において、それまで行われていた分類学的展示と地理学的展示、生態的展示に加えて新たに提唱された「動物それぞれの“種”が持っている行動を引き出し,それを展示する」という展示方法です。
虎が生きた草食動物を襲って倒し、これを食うことは、確かに虎という種が持つ本能的行動のひとつです。そのために虎という生き物には牙や爪が備わっているわけです。それを展示するのは、確かに「行動展示」に当てはまるとは思います。
しかし個人的には魚の活け造りや踊り食い、残酷焼きなども含めて、食われる方に感情移入してしまう方なので、ああいう光景はあまり気分の良いものではありません。そうしなければこちらの生命にかかわるというのでないならば、偽善と言われようとも、食うために命を奪う相手の苦痛は可能な限り軽減してやるべきではないかと思っています。ですから、やはり動物園の肉食動物が生き餌を食うところは、いくら行動展示が流行とは言え、いかがなものかと思います。
ところで今月22日、韓国において、生きた豚を韓国人の群れが八つ裂きにするというニュースが流れたようです。これもやはり、一種の行動展示と理解するべきなのでしょうか。ずっと前からあの半島はオープンスタイルのZoological Gardenだと思ってたので今更驚きはしませんが、いくらその種の持っている本能的行動とは言え、ああいう行動の展示は控えるべきではないかなと思いました。
さて、枕はこの辺にしておきまして、話はがらっと変わりますが、新日鉄とPOSCO(旧浦項総合製鉄)が共同で製作し、無料で配布している「鬼とドッケビの新・モノ語り」という絵本をご存知でしょうか。
当初私はこの本の存在すら知らず、当然誰が執筆したかなどということも、まったく知りませんでした。ですからこの本のことを知らされた時も、実はあまり興味もなく、半ば聞き流し気味に聞いておりましたが、この絵本の作者名を見て、ぎょっとしました。
この本の作者は李寧煕。この名前には覚えがあります。あり過ぎます。
今から20年近くも前になるでしょうか。当時「古代日本語は朝鮮語で解読出来る」という本が幾冊か出版されました。私も、その中の代表的な一冊である「人麻呂の暗号」という本を読んで、ころりと騙され、いたく感心したバカの一人です。
しかし、「人麻呂の暗号」の方は、まだ邪気がありませんでした。確かこの本は多言語学習サークルか何かの4人の女性による共著で、朝鮮語初学者が陥りがちな落とし穴に素直にはまった人たちが書いた本だったと思います。もしかすると何らかの悪意が潜んでいたのかも知れませんが、それでもまだマシだったと思います。李寧煕の「もうひとつの万葉集」という本に較べれば。
李寧煕の「もうひとつの万葉集」は1989年8月に文藝春秋社から発行された本です。多分もう絶版していると思いますし、仮に本屋で見つけても買う価値はありません。古本屋で100円以下だったら、参考資料として古本屋への手間賃のつもりで買ってやっても良いかなという程度の本です。図書館に置いてあるのを見つけたらガメて捨て・・・いや、何でもありません。
この本で解釈されている歌の一例を挙げてみます。
額田王が詠んだ「あかねさす 紫野行き 標野行き 野守は見ずや 君が袖振る」という有名な一句があります。
これは「(あかねさす=「紫」に掛かる枕詞)紫草を摘みつつ標野(=禁野=皇族所領地)を行く私に向かって、あなたは大胆にも私に袖を振って見せるけれど(袖振る=求愛の仕草)、野守に見られはしないでしょうか」という歌です。この歌が詠まれた背景にある状況設定を詳しく知っている方が、この歌の本当の良さがわかると思いますが、仮にそれをまったく知らずとも、十分に情景が伝わる歌だと思います。
この歌を李寧煕は次のように解釈します。
「あかい股(男性器の隠喩だそうです)が、紫色の野原(女性器の隠喩だそうです)を行きます、標野(禁じられた野原、これも女性器の隠喩だそうです)を行くのです。野守は見ていないでしょうね 貴方が私のハサミ(両股)をひろげるのを」
この一首を見ただけでも十分お釣りが来るほど想像がつくと思いますが、とにかくこの本は、著者の下劣な品性と日本に対する激しい悪意と蔑視に基づいた牽強付会で書かれている本です。当時「週刊朝日」(1990.2-9, 2-16, 2-23)上で大野晋氏、菅野裕臣氏、中西進氏といったトップレベルの言語学者が丁寧に反論を加え、比較言語学の安本美典氏が「新・朝鮮語で万葉集は解読できない」という本まで出して完膚なきまでに論破し尽くしております。
新日鉄とPOSCOが出した絵本は、こういう女が文章を書いてる本ですから、絶対に確実に間違いなく完璧に鉄板でトンデモが入っている、と思った私は、ツテを通じてこの絵本を取り寄せました。
とりあえず、全部のページをスキャンして保存し、現在テキスト起こしを行っております。絵本に記載の日本語文とハングル文、これにハングル文の翻訳文を加えて、近日UPする予定です。
ただし、現在著作権がらみの問題が鬱陶しいので、全文一気公開はいたしません。あくまで一部引用です。UP期間も限定いたしますので、あらかじめご了承ください。
尚、現物が欲しい方は、新日鉄広報センターまでFAXでご請求ください。送料無料で送付してもらえます。無料なだけに増刷されるかどうかはわかりませんので、お早めにどうぞ。
以下、新日鉄ホームページ、ニュースリリースより引用。
2007年4月23日 新日本製鐵株式会社 株式会社 ポスコ 学習絵本(新日鉄・POSCO共同編集、日韓特別版) 『鬼とドッケビの新・モノ語リ』の発行について 新日本製鐵株式会社(社長:三村明夫、以下新日鉄)と株式会社ポスコ(会長:李亀澤、以下POSCO)は、このたび小中学生などを対象に、鉄作りを中心とした日韓の文化交流の歴史をわかりやすく紹介した学習絵本(日韓特別版)を発行しました。 新日鉄とPOSCOは、2000年8月株式の相互保有を含めた戦略的提携を締結して以降、各部門にて積極的に戦略的提携を推進してきました。広報部門でも人材育成を目的とした若手管理職の相互派遣や、広報誌での特集企画を行ってきました。こうした取組みの深化・拡大に向けて、今回両社が共同で、学習絵本(日韓特別版)『鬼とドッケビの新・モノ語リ』の企画・編集を行いました。 一方これまで新日鉄では学習絵本『新・モノ語リシリーズ』(1~6巻)を発行し、地球環境を大切にしながら豊かで快適な生活を送ることや、鉄づくりを通じて科学の世界を理解しその楽しさを知ってもらうことなどをテーマにしてきました。製鉄所見学・展示会・科学館などで無料配布し、合計で53万5千部を発行。子供たちの他、学校関係者、保護者、地域でボランティア活動をする皆様などから多くの反響をいただいてきました。今回の日韓特別版は絵本第7巻目となります。 今回の学習絵本では、日本の製鉄技術が古代の朝鮮半島から伝わり日本で発展した歴史を、「鬼(韓国語でドッケビ)」や「福の棒(日本の打ち出の小槌に相当)」に託して、おとぎ話として伝えています。執筆は日韓両国の文化・言語に詳しいPOSCO人材開発院教授で作家の李寧煕さんに、挿絵は学習絵本『新・モノ語リ』第4巻でも担当いただいた在日韓国人画家金斗鉉さんにお願いしました。また日韓両国の子供たちにお互いの文化・言語を学び日韓の友好関係を一層深めてもらう意味を込めて、日韓両国語併記としました。 今後、各製鉄所での小中学生の工場見学会や、各種展示会などで無料配布します。ご希望の方には無料で郵送致します(下記までお申込み下さい)。 <『鬼とドッケビの新・モノ語リ』の概要> 発行月 :2007年4月 発行部数:初版5万部(日本)、初版1万部(韓国) 体裁 :A6判、カラー64ページ 発行者 :新日鉄総務部広報センター、POSCO弘報室 執筆 :李寧煕(POSCO人材開発院教授、作家) 挿絵 :金斗鉉 ストーリー: ずっとずっと昔のそのまた昔。韓国に、おすもうさんのように大きく、角が1本生えた鬼が住んでいました。鬼たちは、欲しい物が何でも出せる「福の棒(打ち出の小槌)」を持っていて、村の人たちに斧や鎌などを出してあげました。この鬼は、見上げるほど大きいと言う意味の「ドッケビ」と呼ばれていました。 古代韓国は、頑丈な鉄の農機具や武器をつくって栄えていました。この鉄づくりの技術者たちは、ドッケビと呼ばれた鬼のように、背が高くて大きくて、長い髪を頭の上に角のように一つにまとめて結んでいました。鉄づくりで、赤や青の炎に照らし出された姿は赤鬼・青鬼のよう。刀や斧をつくるため鉄をたたく槌はまるで「福の棒」のようです。鉄は貴重品だったので、鉄があればご馳走も服も何でも手に入れられました。 ドッケビの親方は、鉄づくりに必要な砂鉄や木が豊富で、まだ人々が鉄づくりを知らない海の向こうの日本に行こうと思い立ちました。ドッケビたちは、韓国語で大きい人という意味の「オンニ」と呼ばれ、それがなまって「おに」と呼ばれるようになったといわれています。 日本と韓国の昔話には鬼が登場します。日本では、子供の守り神として鬼のお祭りがあります。昔、人々のために鉄をつくっていた鬼たちは、今、お祭りやお話の中で子供たちを守りながら生きているのです。 <お問い合わせ先> 新日本製鉄 総務部広報センター(電話03-3275-5016) POSCO JAPAN (電話03-3546-1212) |