韓国で漢字教育が復活するというけれど
まだ寒さの残る頃、見上げる位置に葉よりも先に萌え咲く桜の儚くも気高い美しさとは対照的に、ツツジは私たちの目の高さより低い位置にある道路脇の植え込みや住宅の生け垣に、赤や白、淡紅の花が新緑に混ざってとりどりに咲き乱れ、生命力に溢れる初夏の風景を彩ります。
桜が終わる頃、タンポポが緑地に黄色い水玉模様を描いていましたが、今ではそれらもみんな綿帽子になって、シロツメクサと一緒に緑地を白い水玉模様に染め抜きます。
ところでツツジもタンポポも身近な花ですが、漢字で書くとえらい難しいんですね。ツツジは「躑躅」と書きますし、タンポポは「蒲公英」と書きます。またツツジの中でも、ドウダンツツジは「満天星」と書きます。知らなければ絶対に読めない超一級の難読漢字です。
植物の名前には難読漢字が多いのですが、それは中国名や学名に日本語名を当てていることが多いためでしょう。
さて、漢字と言えば韓国で近々漢字教育が復活するとやら。もっとも小学校の教科書に漢字を併記するだけらしく、それでどの程度の効果があるのかは、甚だ疑問ですが。
個人的には、韓国人の知的レベルを向上させるために漢字教育を行なうことは、それなりに効果的だと思います。ただし韓国人が情緒的にどの程度漢字を受け容れることが出来るかという問題が、大きな障壁になるでしょう。
偉い人や賢い人たちが「愚民に漢字は難し過ぎる」と考えるのは漢字文化圏においてはよくあることで、かつて日本語においても漢字廃止論はありました。しかし日本においては、当の「愚民」たちがお上が押し付けた「平易な漢字」だけでは満足せず、こぞって「難しい漢字」を使いたがった結果、「平易な漢字」としてお上が定めた「当用漢字」が廃されたという経緯がありました。
対する韓国では、お上が漢字廃止を決めるや、「愚民」たちは喜んでそれを受け容れ、漢字を「前時代の遺物」と嘲笑し、進んで捨て去りました。
結果、韓国人の文章読解力は甚だしく落ちたなどと言われていますが、本当は順序が逆だと思います。
もともと彼らの文章読解力は極めて貧弱だったと言うか、ハングルを含めた文字そのものに、彼らは極めて疎遠だったのです。日帝統治時代、日本人に無理やり漢字とハングルを覚えさせられ、その結果彼らにも文字で構成された文章を読むことが出来るようになりました。
その後彼らは漢字を捨て去り、ハングル専用で文章を読み書きするようになりました。ハングル専用によって、韓国人の識字率は100%だなどと韓国人は嘯きますが、実際にはハングルは読めても文章が読めない「機能性文盲」の韓国人は少なくありません。
過去記事で、ハングル主体で書かれた文章がどういうイメージのものなのかをご覧に入れたことがありますが、あれでは文章を読解するどころか、読む気になるところからかなりの気力を要するでしょう。
韓国小学校の教科書における漢字併記については、やらないよりやった方が良いとは思います。ただ根本的な問題は、漢字の有無というよりは、韓国人の文章に対する理解意欲(理解力ではありません)にあると私は考えております。
彼らは、ハングルで書かれた文章ですらきちんと読んでいません。文中の目についた語彙に反応して、その語彙に対する印象で文意を解釈します。書く方もきちんと書きません。自分がわかっているから他人にもわかるはずだという前提で、彼らは文章を書きます。
これは韓国の掲示板を翻訳しているブロガーの皆さんには、痛切にご理解いただけるのではないかと思いますw
漢字は、ハングルよりは意味を正しく表現しますので、彼らの目が漢字で書かれた語彙に反応すれば、少なくともハングルで書かれた語彙に反応するよりはより正しく意味を伝え得る期待は持てます。
しかし膠着語の宿命として、文章は最後まできちんと読まないと正しく理解出来ないこともしばしばあり、漢字併記だけで向上させ得る文章読解力は、多く見積もっても2割程度でしょうか。
更に言えば、漢字にハングルが併記されているということは、漢字をすっ飛ばしてハングルだけを読むということも大いに考えられるわけです。
日本語の場合、漢字にルビ(ふりがな)を打つことで漢字の読解と習得を助けるということは事実としてあります。ですので、ハングルにおいても漢字併記がまるで無意味とは思いませんが、彼らの「読みたい字だけを読み、読みたくない字は全く読まない」という習性が、併記の効用を無効化するような気もします。
そもそも、小学校で教わった(と言うよりは「見た」)だけの漢字を、どの程度彼らが吸収するかが甚だ疑問です。
韓国における漢字教育については、在日韓国人を使って韓国人に漢字教育をすれば良いというご意見を見かけたことがあります。
最初は良いアイディアだと思ったのですが、よく考えてみれば在日韓国人がマスターしている漢字はあくまで日本語の漢字、即ち新字です。対する韓国では旧字を用いています。
それに日本語の漢字熟語と韓国語の漢字熟語は、共通するものもありますが、全く異なるものも決して珍しくありません。日韓で共通する漢字熟語は概ね日本語由来なので、韓国では忌避されたり、朝鮮固有語で言い換えられたりすることもあります。
それから四字熟語に多いのですが、全く同じ漢字熟語であっても、日韓で意味が異なるものもよくあります。例えば、「八方美人」と言えば日本では悪い意味で用いられますが、韓国では良い意味になりますし、「臨機応変」と言えば日本では「時と場合に応じて柔軟に対応すること」という意味ですが、韓国では「突然の危機に際して的確に対応すること」という意味のようです。
韓国語が出来ない、旧字を知らない、韓国語の漢字熟語を知らない在日韓国人が韓国人に漢字教育を施すとなれば、それは限りなく日本語の漢字教育となってしまい、ただでさえ日本語由来の韓国語を「日帝残滓」と騒いでいる彼らが、素直に受け容れるとは思えません。
そんなこんなで、韓国の漢字教育復活についてはなかなか楽観的になれないのが正直なところです。